塩浸温泉は、鹿児島県霧島市に位置する歴史ある温泉地で、地元では「鶴の湯」としても知られています。この温泉は、新川渓谷温泉郷の一部で、天降川(新川)水系石坂川の渓谷に囲まれた美しい自然の中にあります。また、温泉は国道223号沿いに位置し、近隣には塩浸発電所があり、利便性の良い場所です。2010年(平成22年)の改装に伴い、「塩浸温泉龍馬公園」として新たにオープンし、坂本龍馬にまつわる歴史や観光スポットとしても親しまれています。
塩浸温泉は1806年(文化3年)に発見され、温泉の効能を求めて多くの人々が訪れるようになりました。当時、この温泉で傷を癒していた鶴を見たことから「鶴の湯」と呼ばれるようになり、切り傷や胃腸病に効果があると信じられていました。安政年間には、地元の住民である丸山栄右衛門によって浴場が設けられましたが、数年後に閉鎖されてしまいました。
1866年5月1日(慶応2年3月17日)、坂本龍馬とその妻お龍がこの塩浸温泉を訪れました。龍馬夫妻が実際に入浴したとされる湯船は、現在も川沿いに残されており、歴史的な観光スポットとして多くの人々に親しまれています。この出来事は、温泉の知名度を大きく高めました。
1867年(慶応3年)には、福山郷に住む岡本助八が浴場を再び設置し、戊辰戦争の負傷兵がこの温泉で治癒したことが広まり、塩浸温泉は一躍有名になりました。また、付近の川岸には「塩牡蠣」と呼ばれる白い固形物が見られたことから、塩浸温泉と名付けられ、薩摩藩によって温泉施設の整備が行われました。その後、1885年(明治18年)に暴風雨の被害を受けたものの、温泉は再び再興されました。
1969年(昭和44年)には、牧園町営塩浸温泉センター(後の塩浸温泉福祉の里)が開業し、多くの利用者に親しまれてきました。1989年(平成元年)には、坂本龍馬とお龍の新婚湯治を記念する碑が建立されました。しかし、施設の老朽化に伴い、2009年(平成21年)に一旦閉鎖されました。その後、2010年(平成22年)に「塩浸温泉龍馬公園」として再開業し、新しい入浴施設や公園が整備されました。また、坂本龍馬や観光に関連する資料を展示する施設「龍馬資料館」も設けられ、観光客にとって魅力的なスポットとなっています。
入浴施設は、石坂川の東側に位置し、狭いスペースに2つの異なる源泉が引かれています。かつての管理棟は取り壊され、龍馬資料館「この世の外」に改装されました。入浴施設の男湯は「龍馬の湯」、女湯は「お龍の湯」と名付けられ、広々とした空間で温泉を楽しむことができます。また、無料の足湯「龍馬とお龍の縁結びの足湯」もあり、多くの観光客が訪れます。入浴施設の北側には、坂本龍馬とお龍の新婚湯治を記念する碑が立てられており、彫刻家楠元香代子の手による龍馬とお龍の像も見どころの一つです。
塩浸温泉へは、鹿児島空港やJR国分駅から鹿児島交通バスで霧島いわさきホテル行きのバスに乗車し、「塩浸温泉」停留所で下車すれば、すぐに到着します。また、車でのアクセスも良く、国道223号沿いにあるため、訪れやすい立地です。
塩浸温泉は、その豊かな歴史や坂本龍馬との関わり、そして美しい自然環境の中でゆったりと温泉を楽しむことができる魅力的な場所です。龍馬とお龍が訪れた歴史的なスポットであると同時に、現代的な施設も整備されており、観光地として多くの人々に愛されています。訪れるたびに、新たな発見と癒しを提供してくれる温泉地です。