蛭児神社は、鹿児島県霧島市隼人町内に位置する歴史ある神社です。この神社は、江戸時代までは大隅国における第二の神社とされ、二之宮大明神とも呼ばれていました。
蛭児神社は、霧島市隼人町の静かな場所に佇んでいます。鳥居をくぐると、社叢と呼ばれる豊かな自然の中に社殿が建てられており、参拝者はその厳かな雰囲気に包まれます。
この神社の祭神は、蛭児尊(ひるこのみこと)です。蛭児尊は日本神話における神々の一人であり、神話の中では天磐橡樟船(あまのいわくすのふね)に乗せられて海に流されたと言われています。
蛭児神社の創建は、神代にさかのぼると伝えられていますが、現在の社殿は寛延3年(1750年)に遷宮造営されたものです。蛭児尊が乗っていた船がこの地にたどり着き、その船から木が生じたという伝説があります。その結果、現在神社の境内には巨木である楠の木が神木として崇められています。
この神木は、享保13年(1728年)に地元の地頭である樺山主計久初が植え継いだものであり、霧島市にとって重要な歴史的遺産となっています。また、境内には金色の節を持つ「金筋竹」があり、祭神が釣り竿や舟を進めるための水棹として使ったとされる竹が根付いているという言い伝えも残っています。
蛭児神社の周囲にはかつて「奈毛気の杜」(なげきのもり)と呼ばれる美しい森が広がっていました。別名「奈毛木神叢」とも呼ばれ、大隅国の中でも景色の良い場所として知られていました。豊かな自然と歴史を感じさせる風景が広がっており、現在も訪れる人々に癒しを与えています。
神社の境内に隣接した場所には、明治の偉人である西郷隆盛が宿泊したとされる宿が復元されています。西郷どんの宿は、当時の雰囲気を再現しており、歴史的な観光名所として多くの観光客が訪れています。この宿では、西郷隆盛の足跡をたどりながら、彼の歴史的背景に思いを馳せることができます。
蛭児神社の近くには、日当山温泉という温泉地があります。この温泉には、祭神である蛭児尊が療養したという伝説が残っており、地域の歴史と神話が深く結びついています。日当山温泉は、その豊富な温泉資源と美しい自然環境で知られており、多くの温泉客が訪れる場所です。
蛭児神社の周辺からは、奈良時代頃のものと推定される「海獣葡萄鏡」(かいじゅうぶどうきょう)と呼ばれる銅鏡がいくつか出土しています。これらの遺物は、当時の文化や信仰、交易の様子を知る貴重な考古学的資料として注目されています。
蛭児神社は、古代の神話や伝説に彩られた神社であり、鹿児島県霧島市の重要な文化遺産です。江戸時代には二之宮大明神と呼ばれ、地域の信仰の中心であったこの神社は、今も多くの参拝者に愛され続けています。神社を訪れることで、歴史的な背景や古代の信仰、自然との調和を感じることができるでしょう。また、近隣には西郷隆盛にまつわる史跡や温泉地もあり、歴史や自然を楽しむ旅の一環として訪れる価値のある場所です。