龍門滝は、鹿児島県姶良市加治木町を流れる網掛川の中流に位置する、高さ46メートル、幅43メートルの美しい滝です。この滝は「日本の滝百選」に選ばれており、その壮大な景観から「龍門の滝」(りゅうもんのたき)とも呼ばれています。
龍門滝は、網掛川がシラス台地から姶良平野へ流れ出す地点に位置しており、比較的開けた場所にあるため、遠方からも眺めることができます。特に九州自動車道を走行する際には、その姿を車内からも楽しむことができます。
この滝の水量は、上流で農業用水が取水されることから、季節や天候によって大きく変動します。特に5月末から9月にかけての農繁期に少雨が続くと、滝の流れがほとんど見られなくなることもあります。
滝の近くには龍門滝温泉があり、また、滝の北方上流には板井手の滝までの渓流沿いや、西方には石畳道の龍門司坂など、美しい自然が広がっています。この地域は「龍門滝の森」として親しまれています。
龍門滝の岩盤は、更新世に国分層群と呼ばれる地層に貫入したマグマが冷えて固まった安山岩で構成されています。この岩盤には柱状節理が発達しており、独特の地質学的特徴を持っています。滝の南東約1キロメートルに聳える蔵王岳も、同様にマグマの貫入によって形成された火山岩頸です。
龍門滝は、その姿が中国の「龍門瀑」に似ていることからこの名が付けられました。薩摩藩の藩主であった島津忠恒は、この滝を和歌に詠み込んだことで知られています。また、江戸時代の学者である橘南谿の『西遊記』にも、龍門滝が薩摩藩内で最も名高い滝として賞賛されています。
また、著名な儒者であった安井息軒もこの滝を訪れ、その美しさを称えています。さらに、加治木城主の島津久徴が滝の近くの丘に建てさせた観音像も、今なおその姿を残しています。
かつて龍門滝が深い森に囲まれていた頃、ある老婆が滝壺で洗濯をしていたところ、大波が起こり大蛇が現れたという伝説があります。この出来事以降、滝壺で洗濯をする者はいなくなったと伝えられています。また、全長4-5尺(約1.2-1.5メートル)の巨大な亀が滝壺に生息していたとも言われています。
1989年(平成元年)、龍門滝周辺は観光地としての整備が進み、遊歩道やツツジ園が設けられました。これにより、訪れる人々が滝の美しさをより身近に感じられるようになりました。翌年の1990年(平成2年)4月12日には、「日本の滝百選」に選ばれ、その名声をさらに高めました。
龍門滝は、四季折々の表情を楽しむことができる場所です。特に、渇水時と増水時では全く異なる景観を見せるため、一年を通じて何度訪れても新たな魅力を発見できます。
また、滝の上にある展望所からは、加治木町や九州自動車道を一望できる絶景が広がっています。周辺には町の入浴施設もあり、滝を見ながらゆったりとした時間を過ごすことができます。
龍門滝は、その壮大な景観と歴史、そして伝説に彩られた魅力的な観光スポットです。近くには龍門滝温泉や美しい自然環境が広がり、訪れる人々に癒しと感動を提供しています。ぜひ一度、四季折々の龍門滝を訪れてみてはいかがでしょうか。