中米から南米北部が原産の”さつまいも”。鹿児島へは西暦1700年前後に種子島島主の前田利右衛門が琉球より持ち帰り、栽培・普及に貢献し、その後の食生活史を塗り替えた。さつまいもは、一般には糖質やでん粉が多いというイメージが強いが、カロリーは米、小麦の3分の1程度で繊維質に富み、ミネラルやビタミンなども多く含んでおり、穀類と野菜類の両方の性格を兼ね備えた栄養に富んだ食品である。加熱しても壊れにくいビタミンCやカリウムを多く含んでおり、健康美容食としても注目されている。現在鹿児島県では、年間約40万トンが生産されており、これは全国の生産量の約4割にあたる。種類も豊富に生産する鹿児島は、名実ともに日本有数のさつまいも王国である。頴娃・知覧のブランド産地を中心に、5月の早掘りを皮切りにほぼ年中供給されている鹿児島のさつまいも。現在は健全なバイオ苗100%利用で色も形もすぐれものである。
和名のサツマイモは、江戸時代に琉球王国(現在の沖縄県)を経て薩摩国(現在の鹿児島県)に伝わり、そこで広く栽培されるようになったことに由来します。サツマイモとは、「薩摩藩から全国に広まった芋」という意味です。別名として甘藷(かんしょ)とも呼ばれ、中国では甘藷という植物名が使われます。甘藷は「甘味のある芋」を意味します。
原産地は中央アメリカのメキシコとする説が有力で、紀元前3000年以前からメキシコ地域で栽培されていたとみられています。
地域や歴史によって呼称は異なり、中国(唐)から伝来した由来により、特に九州では「唐芋(からいも、とういも)」や「琉球薯(りゅうきゅういも)」と呼ばれていました。サツマイモは17世紀初めに中国から琉球にもたらされ、その後薩摩へ広まりました。薩摩での栽培が成功し、「薩摩の芋」として、全国へ広まった経緯があります。江戸時代には飢饉を救う重要な作物として奨励され、江戸幕府の命令で東日本各地でも栽培が始まりました。また、第二次世界大戦中は食糧難の時代であり、サツマイモの栽培がさらに奨励されました。
世界には約4000種類のサツマイモが存在しますが、日本で栽培されているのは約40品種ほどです。代表的な品種には、紅あずま、紅こまち、紅赤(べにあか)、安納紅、安納こがね、紅はるか、シルクスイート、金時などがあります。
・紅さつま(べにさつま):鹿児島県で最も多く栽培される品種で、濃い赤色の皮と黄白色の中身を持ち、5月下旬から早い「新芋」として出荷されます。ホクホクした食感で甘味があり、焼き芋や天ぷらなどに適しています。
・種子島紫(たねがしまむらさき):種子島の在来品種で、外皮は白く中身は鮮やかな紫色をしています。甘味が強く、焼き芋や蒸し芋、菓子加工にも利用されます。
・安納いも(あんのういも):鹿児島県種子島産の在来種で、「蜜イモ」とも呼ばれるほど甘味が強く、ねっとりとした食感が特徴です。干し芋や焼き芋、デザートの原料に使われます。
・こがねむらさき:種子島で古くから栽培されている紫芋で、灰白色の皮と薄紫色の中身を持ちます。上品な甘さがあり、天ぷらやふかし芋、焼き芋に向いています。
・山川紫(やまかわむらさき):鹿児島県山川地方で栽培される品種で、赤色の皮と濃い紫色の中身をしています。糖分が少なく、青果には向きませんが、着色料として利用されます。
・えいむらさき:鹿児島県頴娃町で生産される品種で、赤色の皮とわずかに霜降り状の濃い紫色の中身を持ちます。さっぱりした甘さで、蒸し芋や天ぷら、菓子の原料に利用されます。