鰻温泉は、鹿児島県指宿市に位置する温泉地で、鰻池湖畔に広がっています。鰻池の北東部には小さな集落があり、昔から多くの訪問者に親しまれてきました。江戸時代から続く歴史ある温泉で、公衆浴場や民宿が今もなお営業しています。
鰻温泉は、硫化水素泉および単純温泉であり、その源泉温度は88℃と非常に高温です。湧き出る温泉の蒸気は「スメ」と呼ばれる蒸し器に利用され、炊事などの生活の一部にも取り入れられています。
鰻温泉の歴史は江戸時代にまで遡ります。この温泉の開発者とされるのは山川の僧・盈寿で、彼がこの温泉を利用し始めたのが最初だと言われています。江戸時代後期の地誌『三国名勝図会』にも記載されており、当時から皮膚病に効能があると評判でした。
1901年(明治34年)3月には公衆浴場が開設され、現在も「区営鰻温泉」として多くの人々に親しまれています。
鰻温泉は、日本の偉大な指導者である西郷隆盛が愛好した温泉地としても知られています。「樺山資紀文書」によると、西郷隆盛は1874年(明治7年)の旧暦12月27日、13頭の犬と2人の侍従を連れて突然この地を訪れました。その際、西郷は約1ヶ月にわたりこの温泉地に滞在し、昼間は近くの開聞岳で狩猟を行い、夜は毎晩温泉につかっていたと伝えられています。
西郷は、福村市左衛門の家に滞在しており、彼に感謝の気持ちとして犬を贈ろうとしましたが、市左衛門は犬を怖がったため、襦袢(フランネル製シャツ)を代わりに贈り、その襦袢は今も記念として保管されています。また、佐賀の乱に敗れた江藤新平が、逗留中の西郷に決起を促すために訪れたこともあり、二人の会談は歴史的にも有名です。
この出来事を記念して、1936年(昭和11年)には「西郷隆盛逗留記念碑」が建てられています。
泉質:
硫化水素泉および単純温泉
源泉温度:
88℃
効能:
皮膚病、神経痛、病後回復に効果があるとされています。
鰻温泉は、映画『男はつらいよ 寅次郎真実一路』のロケ地としても利用されました。美しい自然と伝統的な雰囲気が映画の舞台にぴったり合い、多くのファンにとっても記憶に残る場所となっています。
鉄道:
鰻温泉へのアクセスは、JR指宿枕崎線の山川駅からタクシーで約10分ほどです。徒歩では約1時間の道のりとなりますが、途中で美しい自然を楽しむことができます。
鰻温泉は、その歴史や美しい自然、そして温泉の効能が訪れる人々に深い癒しを提供する場所です。西郷隆盛や多くの歴史的人物がこの地を愛し、多くの物語が生まれました。現在も、昔ながらの趣を残しつつ、多くの人々に愛され続ける温泉地です。歴史の足跡を感じながら、心身ともに癒されるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。