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知覧武家屋敷庭園

(ちらんぶけやしきていえんぐん)

江戸時代の雰囲気が息づく薩摩の小京都

約260年余り前、知覧領主(18代)島津久峰時代の武士小路区割の名残りで、武家屋敷通りと屋敷庭園が保存されている風致地区。各屋敷が塁のように防衛障壁となるよう工夫されている。知覧の庭の大部分は枯山水だが、森邸庭園だけは池泉式。武家屋敷群は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、庭園は国の名勝に指定されている。【規模】延長700m

薩摩の小京都、知覧武家屋敷群で日本庭園と美しい町並みを楽しんできました。

知覧町は薩摩半島の南中央部に位置し、江戸時代に建てられた武家屋敷群がそのまま残っています。この地域は国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定され、「薩摩の小京都」としても知られています。

知覧町へは鹿児島市から車で約50分、電車ならJR鹿児島中央駅から40分の平川駅で下車してバスに乗り換えて約30分で到着します。

武家屋敷群がある通りの近くには、清流溝と呼ばれる麓川の疎水が流れ、そこでは鯉がのんびりと泳いでいます。町の通りには古風な雰囲気が漂い、歩くだけで心が和みます。

武家屋敷群は島津家の分家である佐多氏16代・島津久達(慶安4~享保4年/1651~1719年)から18代・島津久峯(享保17~安永元年/1732~1772年)の時代に形成されました。約700mの通りには現在も7軒の武家屋敷の庭園が残り、国の名勝に指定されています。

さらに、屋敷のみが残されている「旧高城家住宅」を加えた8軒が一般公開されています。驚くことに、今でも多くの屋敷に子孫の方が住んでおり、景観を守るために組合を作って管理や清掃を行っています。

知覧の武家屋敷群は事前予約すれば無料でガイドが案内してくれます(入場料別途)。

「森重堅庭園」は広大な敷地には立派な門があり、庭園は見事な日本庭園が広がっていました。知覧の武家屋敷群では一般公開されている庭園も多いですが、森重堅庭園は男女の玄関が合体した「知覧型二ツ家」の特徴的な造りで、希少な存在です。

庭園は寛保1(1741)年に造られたもので、「枯山水」の様式が一般的な中、この庭園は池を持っており、山の湧き水を使っています。

旧高城家住宅にも訪れました。こちらは庭園はなく、屋敷のみが残されていますが、武家屋敷の特徴的な造りが見られました。

知覧の武家屋敷群の散策は、歴史的な魅力と美しい日本庭園に包まれる素晴らしい体験でした。

歩いているだけでも、知覧の武家屋敷群にはさまざまな仕掛けが見つかります。例えば、家ごとに石垣の形が異なります。左側が切石、右側が玉石の石垣など、それぞれに意味があるようです。

また、通りの道が少し曲がっていることにも気づきます。これは敵からの矢を避けるための設計だったようで、武家屋敷らしい知恵が見られます。

さらに、生け垣に植えられたイヌマキも武士らしい理由がありました。敵がよじ登れない柔らかい樹木でありながら、外からの視線を遮る効果もあるため、身の安全を考えた配置となっています。

通りの三叉路には「石敢当」という大きな岩があり、これは沖縄の魔除けの影響を受けたものです。知覧の港がかつて琉球貿易の拠点であったことから、琉球文化の影響が見られるのです。

さらに、知覧の武家屋敷群には四季折々の花が楽しめる庭園があります。佐多直忠庭園では母ヶ岳を借景にして、梅の木を植えています。平山亮一庭園では石組みがなく、母ヶ岳を利用してサツキの大刈込みを築山に見立てています。どの庭園も季節ごとに美しい風景を楽しめるよう工夫されています。

また、武家屋敷内には武士の生活を垣間見ることができるアイテムもあります。太刀洗と呼ばれる水溜めは、血で汚れた刀を洗うために備えられたもので、武士の身の安全を考えた準備として設けられていました。そして、武家屋敷の名物である「雨戸返し」は、戸袋がなく、角の部分で雨戸を引き出して方向転換できる仕組み。敵を見逃さず、女性が留守中に使えるようにと工夫されています。

知覧の武家屋敷群は、武士の知恵や工夫が随所に見られ、歴史的な魅力とともに訪れる人々を楽しませています。

知覧の武家屋敷群には、個性豊かな庭園が3つ残っています。一つ目は「平山克己庭園」で、母ヶ岳の美しい景色を借景にしており、イヌマキの生垣が上手く調和しています。京都や琉球出身の庭師が手がけているそうです。

次に、「佐多民子庭園」は巨岩を積み重ねて造られており、麓川の上流から牛馬を使って巨岩を運んできたとのこと。巨岩の割れ目は遠目ではわかりにくいものの、細かい手作業によって造り上げられた庭園です。

そして、「佐多美舟庭園」は知覧武家屋敷の中で最も広く豪華な庭園です。枯滝を中心に配置された石組みが庭園の迫力を一層引き立てています。

さらに、「西郷恵一郎庭園」は「鶴亀の庭園」とも呼ばれる美しい庭園です。岩が亀の頭に見え、刈り込みが甲羅に見立てられているデザインが愛らしいとして知られています。

知覧武家屋敷群では、「猪目」と呼ばれるアイテムが縁結びのキーワードとして人気であり、ハート型の手水鉢も実は猪目を模して造られたものだということが分かります。このようなアイテムにちなんだイベントが開催されており、期間中に参加すると各種商品がもらえるそうです。

この美しい町並みや庭園の美しさは、地元の住民が協力して日々管理しているからこそ実現しているとのこと。地域の人々が大切にしているおかげで、武家屋敷群は美しさを保ち続けています。皆さんも「薩摩の小京都」と称されるこの町を訪れて、その美しさと歴史を感じてみてください。

Information

名称
知覧武家屋敷庭園
(ちらんぶけやしきていえんぐん)
リンク
公式サイト
住所
鹿児島県南九州市知覧町郡6198
電話番号
0993-58-7878
営業時間

9:00~17:00

定休日

無休

料金

入園料
大人 530円
小人 320円

アクセス

鹿児島中央駅からバスで70分 → 平川駅からバスで30分

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