紫尾温泉は、鹿児島県薩摩郡さつま町にある静かな温泉地で、歴史ある温泉として知られています。温泉の泉質は単純硫黄泉で、肌に優しく、リラックス効果があります。この温泉地は、山々に囲まれた静かな環境にあり、保養や静養に最適な場所です。
紫尾温泉の源泉は、「上之湯」と「下之湯」の二つがあり、特に上之湯の源泉は紫尾神社の拝殿下から湧き出しています。このため、紫尾温泉は「神の湯」とも呼ばれ、地元の人々や訪れる人々に親しまれています。温泉街は、旅館が数軒と共同浴場の「紫尾区営大衆浴場」を中心に形成され、ひっそりとした湯治場の雰囲気が漂っています。
紫尾温泉の泉質は「単純硫黄泉」であり、無色透明で微かに硫黄の香りがするお湯です。泉温は50.3℃で、pH値は9.4とアルカリ性の高温泉です。この泉質は、慢性皮膚病や婦人病、きり傷などの治療にも効果があるとされ、飲用にも適しており、糖尿病や痛風、便秘の改善にも効果が期待されています。
紫尾温泉の大きな特徴は、「神の湯」として知られる紫尾神社拝殿の下から湧き出る源泉です。この湯は古くから神聖なものとされ、温泉地の名前の由来ともなっています。また、湯治場の雰囲気を持つ温泉街には、旅館や共同浴場「紫尾区営大衆浴場」があり、静かな環境の中で保養や静養を楽しむことができます。
特に、霊峰紫尾山を背景に、清らかな渓流が流れるこの地は、自然と調和した癒しの空間として親しまれています。「一浴で煩悩の垢を洗い流す」とされ、訪れた人々に心身ともに爽快な体験を提供しています。
紫尾温泉がいつ発見されたかは明確ではありませんが、記録として残っている最古のものは南北朝時代の至徳年間(1384年)にまで遡ります。江戸時代の「三国名勝図絵」や明治時代の「薩隅日地理纂考」にも、紫尾温泉の記載が見られ、古くから温泉地として知られていました。
神興寺を再興した快禅僧都が浴用として使用したと伝えられていますが、当初は僧侶のみが利用していました。一般の人々が温泉を利用し始めたのは、百数十年前からとされています。
温泉の湧出は現在でも続いており、拝殿下から毎分約200リットルの湯が湧き出ています。泉温は約55℃で、この豊かな湯量が神秘的な「神の湯」として尊ばれています。
紫尾区営大衆浴場は、源泉に最も近く、新鮮な温泉を楽しめる場所です。さつま町や近隣の地域から多くの人々が訪れ、特に年末年始には賑わいを見せます。また、「足湯」もあり、紫尾温泉散策の後に立ち寄って休息を取ることができます。浴槽の底には玉石が敷かれ、足裏を心地よく刺激します。
神の湯は飲用も可能で、多くの訪問者がペットボトルに温泉を入れて持ち帰ります。地元では、温泉水を料理や焼酎の水割りに使用することが一般的で、その用途は幅広く、非常に人気があります。
紫尾神社は鹿児島県薩摩郡さつま町紫尾にある由緒ある神社で、古くは「紫尾山三所権現」と称され、北薩摩地域の総鎮守として崇敬されてきました。祭神は、瓊瓊杵命(ににぎのみこと)、彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)、鵜葺草葺不合命(うがやふきあえずのみこと)であり、その拝殿の下から温泉が湧き出ていることから、「神の湯」としても知られています。
紫尾神社の由緒は、孝元天皇の時代に開山されたと伝えられています。また、第26代継体天皇の時代には、僧の空覚上人が夢のお告げを受けて紫尾山を「聖地」とし、神社を建立したと言われています。紫尾山は修験道の聖地ともなり、多くの修行者が訪れる場所として名を馳せました。
江戸時代には薩摩藩主・島津氏からも崇敬され、社領の寄付や社殿の修復が行われるなど、地域の鎮守神として厚い信仰を受けてきました。また、紫尾神社は永野金山の発見にも関与したとされ、この神託により鉱山業に関わる参詣者も多く訪れたと伝えられています。
紫尾温泉の秋の風物詩として有名なのが「あおし柿」です。地元のシブ柿を温泉の湯に12時間浸すことで、甘くほのかに温泉の香りが漂う「あおし柿」へと変わります。「あおす」という言葉は鹿児島弁で「渋を抜く」という意味を持ち、この作業を通じて温泉地ならではの特産品が生まれています。
紫尾温泉へのアクセスは、九州新幹線の川内駅からバスで宮之城行きに乗り、約40分で到着します。その後、タクシーで約15分で温泉地へアクセスすることが可能です。公共交通機関を利用しても比較的便利に訪れることができる温泉地です。