徳之島は、南西諸島の奄美群島のほぼ中央に位置する離島です。鹿児島県大島郡に属し、徳之島町・伊仙町・天城町の3つの自治体で構成されています。豊かな自然と長寿の島としても有名であり、2021年7月26日には、その動植物の多様性が認められ、奄美大島、沖縄島北部、西表島と共に世界自然遺産に登録されました。この島は、カルスト地形が発達しており、独自の海蝕洞や海蝕台が見られるだけでなく、希少な固有種が生息することから「東洋のガラパゴス」とも呼ばれています。
徳之島は鹿児島市の南南西約468km、沖縄本島の北北東約257kmに位置しています。面積は約247.77平方キロメートル、周囲は89.2kmと、奄美群島内では奄美大島に次いで2番目に大きな島です。人口は約21,192人(2024年5月時点)で、温暖な気候に恵まれており、年間平均気温は21.9℃、年間降水量は1,920mmです。
徳之島の特徴の一つは、そのカルスト地形です。石灰岩性の地質により、天然の海蝕洞や海蝕台が多く見られ、自然が作り出した独特の景観が広がっています。特に「犬の門蓋(いんのじょうふた)」や「ムシロ瀬」といった場所は、波食によって形成された独特な海蝕台であり、訪れる人々に大自然の壮大さを感じさせます。
島の中央には井之川岳(645m)と天城岳(533m)を中心とした山塊が広がっています。天城岳は、横から見ると女性が寝ている姿に似ていることから「寝姿山」とも呼ばれています。これらの山岳地帯は、照葉樹林に覆われており、島全体が豊かな緑で包まれています。
徳之島は亜熱帯性気候に属しており、年間を通じて温暖です。夏は熱帯夜となる日が多いものの、猛暑日は少なく、風通しも良いため、東京などの大都市に比べて過ごしやすい気候です。梅雨明け後は安定した晴天が続きますが、台風の通り道でもあり、年に数回の接近があります。特に強力な台風が島を直撃することもありますが、地元の人々は「台風慣れ」しており、適切な対策がとられています。
徳之島は「固有動植物の宝庫」として知られ、その多様な生態系は、奄美大島や沖縄本島との関連性が強い一方で、独自の進化を遂げています。特に動植物の面で、希少な固有種が多く生息しています。
徳之島には、多くの貴重な動物が生息しています。中でも「アマミノクロウサギ」は、島の南北に分かれて集団を形成しており、それぞれ遺伝的に異なることが確認されています。他にも、ケナガネズミやアマミヤマシギ、リュウキュウイノシシなど、多くの希少種が見られます。
徳之島には、奄美大島や沖縄本島との関連が深い動植物が多く生息しています。特に爬虫類や昆虫においては、奄美系と沖縄系の生物が混在しており、独自の進化を遂げた種も存在します。例えば、オビトカゲモドキは、徳之島固有の亜種であり、沖縄本島との関連を示唆する生物です。昆虫においても、「アマミ○○」と名付けられる種が多く見られ、島全体が豊かな生態系を持つことが分かります。
島の北部と中南部の山岳地帯には、スダジイやオキナワウラジロガシを主体とする照葉樹林が広がっています。また、標高500mを超える山頂部では雲霧林が形成され、独自の植物生態が展開されています。徳之島は植物多様性の宝庫であり、多くの希少植物が自生しています。
徳之島の主要産業は農業であり、さとうきびや馬鈴薯、かぼちゃ、さといもなどが主要な生産物です。特に徳之島バレイショやマンゴー、たんかんといった特産物が有名で、島の経済を支えています。また、漁業も盛んで、ソデイカやマグロ、カツオなどが水揚げされています。食品加工産業も発展しており、黒糖焼酎や黒糖菓子などの特産品が多く生産されています。
徳之島の農業では、主に以下の作物が栽培されています。
徳之島の文化は、奄美大島よりも沖縄に近い特徴を持っています。方言は琉球語の一つである「徳之島方言」が使われ、三線を用いた民謡が伝統的に演奏されています。また、闘牛が盛んで、闘牛シーズンには島全体が熱気に包まれます。
徳之島の料理は、薩摩料理と沖縄料理の影響を受けた独自の味わいが特徴です。特に豚肉料理が豊富で、「豚骨」や「油そうめん」、豚足、豚味噌などが人気です。また、「たまごおにぎり」や「冷やしおかゆ」といった、島特有の料理も日常的に食べられています。
徳之島北岸に位置するムシロ瀬は、海岸線に続く花崗岩の岩棚が特徴的です。その名の通り、ムシロ(敷物)のような模様が広がり、青い海とのコントラストが美しい絶景ポイントです。
1972年に皇太子夫妻が訪れたことから「プリンスビーチ」と名付けられた美しいビーチです。白い砂浜とコバルトブルーの海が広がり、観光客に人気のスポットです。
夕日の名所として有名な犬田布岬は、徳之島沖で撃沈された戦艦大和の慰霊碑が立てられています。雄大な景色が広がる観光名所です。
数百メートルにわたり、ソテツがトンネル状に群生するこのスポットは、展望台から奄美大島を望むことができる人気の観光地です。
カムィヤキは中世の陶器窯跡群で、徳之島最大の考古学的発見とされています。2007年には国の史跡に指定されました。
伊仙町にある樹齢300年を超えるガジュマルの木は、島内最大の規模を誇る巨木で、自然の壮大さを感じさせるスポットです。
徳之島は「長寿の島」として全国的に有名です。島民の健康長寿には、温暖な気候や豊かな食文化が影響していると言われています。さらに、「結(ゆい)の精神」という地域の助け合いの文化が根強く残っており、他人の子どもでも地域全体で育てるという風習があります。このような社会環境が、島全体で子育てを支援する体制を作り上げ、高い出生率を保っています。
実際に、2005年の国勢調査では、徳之島の3町が出生率の上位を占め、最近の厚生労働省の調査でも、徳之島町が合計特殊出生率ランキング1位、天城町が2位と、全国的にも高い出生率を誇っています。このような背景には、島全体で子育てを支援する風土と自治体の充実した子育て支援制度があると言えるでしょう。
「闘牛の島」としても知られる徳之島では、牛同士が戦う闘牛が400年以上続いており、藩政時代以前から行われていると言われています。島内には13箇所の闘牛場があり、毎年3回の「本場所」と年間20回を超える「準場所」が開催されています。これらの大会は島全体で盛り上がり、島民にとっての大きなイベントの一つとなっています。
徳之島へのアクセス手段は、空路と航路の2種類があります。
徳之島空港(天城町)からは、日本航空(JAL)が鹿児島空港と奄美空港への便を運航しています。毎日、鹿児島空港へ4便、奄美空港へ2便運航されており、島外へのアクセスが便利です。
徳之島には亀徳港と平土野港の2つの主要な港があり、鹿児島や沖縄との間でフェリーが運航されています。マリックスラインやマルエーフェリーが鹿児島や沖縄への航路を提供しており、観光客や地元住民の移動手段として利用されています。
徳之島は、その独特な自然景観や希少な動植物、多様な文化や歴史が魅力の島です。美しいビーチや歴史的遺産、島特有の行事や料理など、訪れる者を魅了する要素が満載です。自然遺産としての価値も高く、観光地としての注目度が増しています。南国の楽園ともいえる徳之島で、ぜひ豊かな自然と文化を体験してみてください。