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薩摩硫黄島

(いおうじま)

硫黄島は、日本の鹿児島県に属する薩南諸島北部に位置する火山島です。島全体は鹿児島郡三島村の一部として「硫黄島」という大字を構成しています。島の別名として薩摩硫黄島とも呼ばれることがあり、火山活動や歴史的な背景から注目されています。

別名「薩摩硫黄島」とも呼ばれ、大隅諸島に含まれるとする説と含まれないとする説がありますが、いずれにせよ、独特の文化や自然景観を持つ島として多くの観光客を魅了しています。

観光名所と施設

東ノ立神と東温泉

硫黄島を訪れる観光客にとって、温泉は欠かせないスポットです。特に「東温泉」は、全国の露天風呂ランキングにも取り上げられることがあり、その絶景と温泉の心地よさで人気があります。その他にも、坂本温泉やウータン温泉(大谷温泉)、穴の浜温泉といった温泉も楽しめます。硫黄岳からの距離に応じて、強酸性泉から食塩泉まで、多様な泉質を楽しむことができるのも魅力です。

安徳天皇墓所

硫黄島には安徳天皇の墓所があると伝えられています。島の伝説によると、安徳天皇はこの地で寛元元年(1243年)に崩御したとされています。御陵の周辺には「平家一門墓」と呼ばれる中世墓地の遺跡もあり、歴史ファンにとっては見逃せないスポットです。

薩摩硫黄島灯台

薩摩硫黄島灯台は、1972年に初点灯した灯台です。島の美しい風景と相まって、灯台は観光スポットとしても人気があります。

島内の温泉と観光名所

温泉巡り

硫黄島は温泉天国としても知られており、多くの野湯が点在しています。以下の温泉が特に有名です:

また、硫黄島内には他にも湯の滝、赤湯、長浜温泉、平家の城温泉などがあり、訪れるたびに異なる泉質を楽しむことができるのも魅力です。

熊野神社と俊寛伝説

熊野神社は、流罪となった藤原成経や平康頼によって勧進された神社です。後に安徳天皇もこの地に居住し、神聖な場所として崇められました。俊寛伝説とも深い関わりがあり、島には俊寛にまつわる史跡が多く残されています。

自然の驚異と景観

稲村岳と矢筈岳

硫黄島は、火山活動によって形成された独特の地形を持っています。稲村岳は約3,000年前に活動を停止した玄武岩質溶岩の火砕丘で、その雄大な姿は島を訪れる観光客を圧倒します。同じく活動停止した矢筈岳も玄武岩と安山岩で形成されており、自然の壮大さを感じられる場所です。

硫黄港(長浜港)

硫黄港は、海底からの噴出物によって海水が常時鉄錆色に染まっているユニークな港です。これは海水と温泉水の化学反応によるもので、訪れる人々に独特の光景を提供します。強酸性の温泉が湧き出る地域としても知られ、珍しい自然現象が観察できます。

昭和硫黄島

昭和硫黄島は1934年の海底噴火によって形成された新しい火山島です。噴火によって新たに生まれたこの島は、東西500メートル、南北300メートル、海抜20メートルに成長し、昭和期における最大規模の噴火となりました。現在、この周辺は好漁場としても知られ、観光客にとっても興味深い場所となっています。

催事・祭礼

硫黄島八朔太鼓踊り

旧暦8月1日・2日に行われる「八朔太鼓踊り」は、島の伝統的な祭りで、矢旗を背負った踊り手が鉦を持った唄い手を囲み、太鼓を叩きながら踊る華やかな行事です。この踊りは熊野神社に奉納され、その後、島中を練り歩きます。国指定重要無形民俗文化財としても認定されており、毎年多くの人が訪れます。

薩摩硫黄島のメンドン

八朔太鼓踊りと同時に行われる「メンドン」は、仮面をつけた神が集落を駆け回り、邪気を払うという行事です。このメンドンは、島の人々にとって重要な伝統で、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。

硫黄島の九月踊り

旧暦9月10日・11日に行われる「九月踊り」は、疱瘡の流行から島民を守るために始まったと言われています。この踊りは無伴奏で行われ、1日目と2日目で異なる歌や振り付けが披露されます。鹿児島県指定無形民俗文化財としても保護されています。

「みしまカップ」ヨットレース

毎年、日本全国から約600人が参加する「みしまカップ」ヨットレースは、山川港沖から竹島港沖までの壮大なレースです。海を舞台にしたこのイベントは、多くのヨット愛好者にとって特別な行事です。

特記事項

俊寛祭り

俊寛伝説に基づく「俊寛祭り」は、硫黄島の名物行事です。日本初の野外歌舞伎が三島村で上演され、話題となりました。毎年、多くの観光客がこの伝統的な祭りを楽しみに訪れます。

空から見る硫黄島

本州から那覇空港行きの航空機に乗ると、硫黄島の上空を通過することがあります。空から見る火山島の噴煙や、海水が変色した光景は、非常に印象的です。飛行機での旅の一環として、このユニークな景観を楽しむことができます。

島内開発とリゾート施設

ヤマハのリゾートホテル跡地

1973年、ヤマハリゾートがこの島に滑走路600メートルの飛行場を建設し、翌年には「旅荘 足摺」というリゾートホテルがオープンしました。しかし、経営不振により1983年に 閉鎖されました。その後、1994年に村が飛行場を取得し、日本初の村営飛行場として再開。現在では「冒険ランドいおうじま」としてキャンプ施設が整備されています。自然豊かな環境の中でアウトドア体験を楽しむことができます。

硫黄岳

硫黄岳は流紋岩質の円錐火山であり、現在も活発な噴気活動が続いています。山頂には直径450メートルの噴火口があり、硫黄岳の独特な景観は多くの登山者を魅了しています。展望台からは、周囲の素晴らしい景色を一望することができ、自然の力強さを感じることができる場所です。

宿泊施設と観光

島内には民宿が5軒あり、100名程度の宿泊客を収容できますが、観光業はまだ発展途上で、宿泊者の多くは公共事業関係者が利用しています。また、港近くにはカフェ「カルデラハウス」があり、レンタルサイクルを提供しています。これにより、島内観光を自転車で楽しむことができます。

地理的特徴と自然環境

島の地形と面積

硫黄島は、東西5.5キロメートル、南北4.0キロメートルの範囲に広がり、周囲14.5キロメートル、面積は11.65平方キロメートルの大きさです。火山島であり、鬼界カルデラの北縁に位置し、ランクAの活火山として指定されています。島の主峰である硫黄岳は標高703.7メートルに達し、常に噴煙を上げています。

自然災害と温泉

島は火山活動による影響を強く受けており、亜硫酸ガスによる農作物被害がしばしば報告されています。また、硫黄島港内には鉄分を含んだ温泉が湧き出ており、海水との反応で海が赤茶色に染まる現象が見られます。このため、硫黄の影響で島の周辺海域が黄色く変色しており、これが「黄海ヶ島」として知られる由来になっています。

歴史的背景

流刑地としての歴史

硫黄島は、平安時代末期から流刑地として利用されていたことが記録されています。『平家物語』には、治承2年(1178年)に平家の僧、俊寛がこの島に流刑されたと記されており、また『吾妻鏡』にも正嘉2年(1258年)に武士が流刑にされた記録が残っています。このように、古くから政治犯の流刑地として知られていました。

硫黄の採掘と交易

11世紀頃から島内で硫黄の採掘が始まり、日宋貿易や日明貿易における重要な輸出品として扱われていました。このため、朝鮮王朝や明にも硫黄島の存在が知られており、朝鮮の申叔舟が著した『海東諸国紀』や、明の鄭若曾が編纂した『籌海図編』にも硫黄島の記載があります。

近代の硫黄採掘と労働争議

20世紀初頭には天然硫黄王と称された広海二三郎が硫黄島工業所を運営し、多くの人々が硫黄採掘に従事しました。しかし、1951年には労働条件の改善を求めて労働争議が発生し、鉱山労働者が賃金の引き上げなどを要求しました。最終的に、硫黄採掘は衰退し、1964年には鉱山が閉鎖されました。

現在の島の暮らしと産業

人口減少と高齢化

1960年には604人いた島の人口は、硫黄鉱山の閉鎖とともに減少し、2020年には125人となりました。島の高齢化が進む一方で、若者の流出が続き、農業や漁業の労働力不足が深刻な問題となっています。

主要産業

島では主に畜産業が行われており、黒毛和牛の生産が盛んです。特に「みしま牛」としてブランド化が進められています。また、島の豊かな竹林資源を活用してタケノコの生産も行われていましたが、高齢化と労働力不足によって生産量が年々減少しています。椿林も多く存在し、椿油や関連製品が島の特産品として販売されています。

漁業

周囲の海域は好漁場であり、特にイセエビ漁が盛んです。しかし、港湾施設が限られているため、小型漁船しか使用できず、漁業の規模は小さいままです。

交通とアクセス

船でのアクセス

硫黄島へは鹿児島港から定期船フェリー「みしま」が運航しており、2日から3日おきに島を訪れることができます。所要時間は約4時間で、鹿児島港と三島村の竹島、硫黄島、黒島を結ぶ航路が運営されています。これにより、村民の生活や物流が支えられています。

飛行機でのアクセス

島には薩摩硫黄島飛行場があり、かつては鹿児島空港からセスナ機による定期便が運航されていましたが、2023年6月以降、滑走路の不具合により運航が停止しています。臨時のチャーター便もありましたが、現在は利用できない状況です。

おわりに

硫黄島は、その自然の美しさと火山活動、歴史的な背景を持つ魅力的な島です。観光地としてはまだ未開発な部分も多いですが、温泉や火山、伝統的な祭りなど、多様な体験を楽しめる場所として、訪れる人々を常に驚かせます。

Information

名称
薩摩硫黄島
(いおうじま)

種子島

鹿児島県