宮之浦岳は、鹿児島県の屋久島中央部に位置する標高1,936mの山です。この山は、屋久島のみならず九州地方全体の最高峰であり、九州本土の最高峰である大分県の九重連山・中岳(1,791m)をも凌ぎます。さらに、この山域はユネスコの世界遺産「屋久島」にも登録されており、その美しい自然環境が世界的に評価されています。
宮之浦岳は、日本百名山や一等三角点百名山の一つとしても知られています。また、西日本においては四国の愛媛県・石鎚山(1,982m)、徳島県・剣山(1,955m)に次いで第3の高峰に位置づけられています。山名の由来は、宮之浦集落の山岳信仰(岳参り)に基づいています。
宮之浦岳を含む屋久島は、約1,000万年以上前の地殻変動によって隆起したとされています。この山は主に花崗岩で形成されており、長い年月の侵食によって多くの奇岩が見られます。特に標高1,600m以上の山頂部では、ヤクシマシャクナゲやアセビなどの植物が生息する風衝草原が広がり、その下には屋久杉やヒメシャラなどの樹林帯が存在します。
屋久島では、麓から見える山々を「前岳」、麓からは見えない山々を「奥岳」と呼んでいます。宮之浦岳は奥岳の一峰であり、屋久島の最高峰です。また、奥岳は海岸沿いの集落からはその姿を望むことができず、山頂部か海上からのみ確認することができます。
長らく宮之浦岳の標高は「1,935m」とされてきましたが、2001年に国土地理院が行った再測量により、実際の最高地点はそれまで三角点とされていた地点よりも南東に約5.3m離れた岩盤の上であることが判明しました。これに伴い、宮之浦岳の公式な標高は「1,936m」に改定されました。
屋久島では登山道のことを「歩道」と呼びます。最もよく利用されているルートは「縄文杉ルート」と「淀川ルート」です。淀川ルートは健脚者であれば日帰りが可能な場合もありますが、他のルートでは山中での宿泊が必要となることが多いです。
1970年頃までは、楠川別れから安房川南沢右岸をたどり、石塚集落(廃村)・10km峠を経て花之江河に至る旧安房歩道が主要な登山道でした。しかし、現在では淀川登山口や大株歩道の人気に押され、旧安房歩道は廃道となっています。
宮之浦岳周辺にはいくつかの無人避難小屋が点在しており、登山者の安全をサポートしています。主な小屋には以下のものがあります。
屋久島の山間部では年間降水量が1万mmを超えると推定されています。特にヤクスギランドや淀川登山口では1万mm以上の降水量が観測されることが多いです。1985年には、宮之浦岳を含む屋久島を流れる河川が「屋久島宮之浦岳流水」として名水百選に選定されました。
宮之浦岳周辺には、屋久島の代表的な山々がいくつか存在します。これらの山々は屋久島三岳と呼ばれ、特に永田岳(1,886m)、栗生岳(1,867m)、黒味岳(1,831m)などが有名です。
宮之浦岳を訪れる際は、これらの周辺の山々や豊かな自然環境もぜひ一緒に楽しんでください。